鴻雁北
鴻雁北(こうがんきたす)4月10日~14日 旧暦3月6日
花見山(福島市)より吾妻山方面を望む
雁が北はシベリア方面へ帰って行く頃。「鴻」は大型、「雁」は小型の雁をさすと言われます。現在、雁はほとんど宮城県の一部にしか渡ってこないそうです。季語としては「帰雁」、傍題として「雁の別れ」「名残の雁」「行く雁」「いまわの雁」などがあります。
『万葉集』や『古今集』、『捨遺集』では「ふるさとの霞とびわけ行く雁はたびのそらにや春をくらさむ」(紀貫之)など和歌の中で多く登場してきています。一方、北へ帰らずに残っている雁は「春の雁」「残る雁」と言い、いささか哀れを伴う季語ではあります。
「雁」使った季語に「雁風呂」があります。北方からの渡取りは海上に浮かべて休むために枝を銜えてくるといい、春の海辺には日本で死んだ鳥の分の枝が残されるので、それで焚いた風呂に入り供養すると言う陸奥湾付近の伝説から生まれた季題として詠われています。
残る雁眼に望郷を湛へをり 扇木
a remaining wild goose:
displaying homesickness
in his eyes
舟ひとつ残して雁の帰りけり 小澤克巳