沈丁花
朧夜にそぞろ歩きをしていると、しっとりと湿った夜気に溶け込んで流れてくる沈丁花の香りは、甘く優しくも微かな艶めかしいさを誘います。沈丁花の原産地中国では「瑞香」という名で室町時代に日本に渡来、古くは1490年に書かれた『尺素往来』に「沈丁華」と記されているそうです。その花の香気の素晴らしさに驚いた当時の日本人が、香料として古来有名な「沈香」と「丁字」を合わせたような香りということで、沈丁花と名付けられたとか。傍題:丁字 沈丁 瑞香 芸香 丁字草
沈丁の夜のしるべと香りけり 扇木
daphnes scent
as a guide
in spring night
ぬかあめにぬるゝ丁字の香なりけり 久保田万太郎